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■お笑い
(1/3)
バンビ「(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)」
紺野「えっ、本当に? 一度も?」
設楽「悪かったな。」
紺野「悪くないけど……少なくとも人生の30パーセントは損してると思うよ。」
設楽「多いだろ!?」
バンビ「あの……何の話ですか?」
設楽「……なんだおまえ、いきなり。」
紺野「そういう言い方ないだろ、大人げない。」
設楽「たった一年違いで大人も何もあるか。」
バンビ「あの……」
紺野「あ、ごめん。 そうだ、いいところに。」
バンビ「 ? 」
紺野「 “レッドサーキット” って見たことある? お笑い番組の。」
バンビ「はぁ、聞いたことは……」
設楽「ほら、見てないじゃないか。」
紺野「見てなくったって番組名は知ってる。 常識だと思うけどなぁ。」
設楽「どこがだ。 おまえの常識はあてにならない。」
紺野「それ、設楽には言われたくない。」
バンビ「(……なんだか2人がお笑いコンビみたい)」
(2/3)
バンビ「(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)」
紺野「だから、そういうのをツッコミって言うんだよ。」
設楽「どれだよ。」
紺野「それだよ。」
バンビ「(……またお笑いの話をしてるみたい)」
設楽「……○○。」
紺野「ああ、こんにちは。」
バンビ「こんにちは。」
設楽「おまえ、今すぐボケてみろ。 紺野がツッコミやるから。」
バンビ「ええっ!?」
紺野「いきなりできるわけないだろ。 僕だって無理だ。見るのと実際やるのとじゃ全然違うんだから……」
設楽「そんなの知るか。 ボケとかツッコミとか言われてもわからないから、見てみようと思ったんだろ。」
紺野「お笑い番組教えただろ、 “レッドサーキット” 毎週やってるんだから一度くらい見てみなよ。 」
設楽「俺にはテレビを見る習慣がない。」
紺野「一度だけでいいから。 面白いって、絶対。」
設楽「嫌だ。」
紺野「なんでそこでそう頑固なんだよ。」
設楽「嫌なものは嫌だ。」
バンビ「(紺野先輩がツッコミで設楽先輩がボケ……かな?)」
(3/3)
バンビ「(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)」
設楽「しょうがないだろ、全然理解できなかったんだから。」
紺野「なんでかなぁ……あんなに面白いのに……」
バンビ「お笑いの話、ですか?」
紺野「○○さん、そうなんだよ。 設楽がちっともわかってくれなくてさ。」
設楽「 “レッドサーキット” とかいうお笑い番組を見てやったんだ。 わざわざその時間に電話で知らせてくるから……」
バンビ「どうでした?」
設楽「……バカバカしいだけだった。」
バンビ「お笑いですから……」
紺野「まぁ、芸人にもいろんなタイプがいるからなぁ。 たまたま設楽の好みを外したのかな。 それなら今度、 “ソーメンズ” のDVD貸すよ。 これは絶対面白いから。」
設楽「いい。」
紺野「遠慮しなくていいから。」
設楽「遠慮してるように見えるか? 全然してないよ、むしろ嫌がってる。 そんなに言うなら俺だって “ショパン全曲集” 全6巻貸すぞ。」
紺野「……いい。」
設楽「遠慮するな。」
バンビ「(……2人のお笑いなら見てみたいかも……)」
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(1/3)
バンビ「(あ、設楽先輩だ)」
設楽「ああもう、うるさい。ついてくるな。」
女子生徒「日誌くらい書いてよ。日直なんだから!」
設楽「おまえだってそうじゃないか。おまえが書けよ。」
女子生徒「他の仕事、ほとんどあたしがやってるじゃない。日誌書いて職員室に届けるくらいはやってよね!」
設楽「ああ、もう……」
バンビ「(設楽先輩、同級生ともあんな感じなんだ……)」
(2/3)
バンビ「(あ、設楽先輩だ)」
設楽「嫌だって言っただろ。」
男子生徒「だっておまえ以外他にいないしさー。」
設楽「去年みたいに氷室先生に頼めよ。」
男子生徒「やだよ、またスパルタ練習になるに決まってるし。 なぁ頼むってば、合唱コンクールの伴奏〜。」
設楽「い・や・だ。」
バンビ「(……設楽先輩って誰かに追われてることが多いような……)」
(3/3)
設楽「……あ。」
バンビ「あ、設楽先輩。」
設楽「おまえは俺を見てない。」
バンビ「え?」
設楽「いいか、見てないんだからな。」
バンビ「ええっ? でも……」
大迫「設楽!!」
バンビ「わっ!」
大迫「おっと、すまん。 ここに男子生徒が逃げてこなかったか?」
バンビ「え、えーと……」
大迫「あれ? おかしいな、確かにこっちに…… 設楽〜!!」
バンビ「………………」
設楽「……行ったか。 ったく、しつこい奴だ。」
バンビ「あの、一体……」
設楽「ああ、ただ補習をサボ…… ……………… 理由なんてどうでもいいだろ。 とりあえずおまえは共犯者だ。」
バンビ「え〜っ!?」
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(1/3)
バンビ「(さ、帰ろっと……ん? あそこにいるのは……設楽先輩と不二山くん?)」
不二山「……押忍。 失礼します。」
設楽「ハァ……」
バンビ「設楽先輩!」
設楽「ああ、おまえか……」
バンビ「どうしたんですか?」
設楽「どうしたもこうしたも。 ピアノ弾いてたら、なんか視線感じたから廊下見たらいたんだよ。 ……あいつが。」
バンビ「え……ピアノ聴いてたんですか、不二山くんが?」
設楽「聴いてたんだか、考えごとしてたんだか……目を閉じてじっとしてた。」
バンビ「………………」
設楽「これからもよろしくお願いしますとか言ってたけど――ん? おまえ、知り合いか? あいつと。」
バンビ「あ、はい。 同級生です。」
設楽「じゃあ言っておけ。 どういうつもりだってな。」
バンビ「えっ!? わたしが?」
設楽「別にいいだろ。 ここに居合わせたのもおまえの運命だ。 とにかく、ちゃんと言っとけよ? じゃあな。」
バンビ「(うう、そんなこと言われても……)」
(2/3)
バンビ「さてと……あ。 不二山くん!」
不二山「ああ。 なに?」
バンビ「設楽先輩のピアノ聴いてたの?」
不二山「うん。 やっぱすげーな、この人の弾くピアノ。」
バンビ「すごい?」
設楽「うるさい。」
バンビ「あ、設楽先輩。」
不二山「押忍。」
設楽「押忍じゃない。 そこにいられると気が散る。 どっか行ってろ。」
不二山「押忍、すみません。 失礼します。」
設楽「……いや、待て。」
不二山「はい?」
設楽「俺のピアノはどうしたって?」
不二山「ああ……俺、練習前に瞑想するんすけど……」
設楽「……瞑想?」
不二山「ときどき設楽さんのピアノが聞こえて、そのまま音を追ってると……急にいろんな感覚が研ぎ澄まされるようなことがあって。
ギリギリの試合で稀に掴める、あの感じと同じ。 そういうときって俺、ほぼ負けてないんすよ。 それを音色で引き出せるのがすげーなって。」
設楽「……おまえ、話が長いんだよ。 でもまあ、そういうことか…… ……とにかく! 聴いててもいいけど俺の邪魔をするな。わかったか?」
不二山「……押忍!」
バンビ「え? でもさっきはどっか行けってーー」
設楽「なんだよ。」
バンビ「……いえ、なんでも。」
設楽「ふん。 じゃあな。」
バンビ「(あんまり悪い気はしてないのかな?)」
(3/3)
バンビ「さてと……あ。 設楽先輩。 もうお帰りですか?」
設楽「帰っちゃ悪いか? 家の用事があるんだよ。」
バンビ「じゃあ、今日はピアノ聴けないんですね……」
設楽「まあな……あ。 あいつに会ったらおまえから言っとけ。 今日は来ても無駄だって。」
バンビ「あいつ……? あ、不二山くんですか?」
設楽「俺のピアノを毎日聴きに来る物好きなんて、おまえ以外じゃあいつくらいだ。」
バンビ「う……でも、そんなに気にするなんて珍しいですね。」
設楽「……べつに気にしてない。 後で文句言われたりしたら面倒くさいってだけだ。」
バンビ「…………」
設楽「……なにがおかしいんだ。 ちゃんと言っとけよ? そろそろ来る時間だから。」
バンビ「ふふっ、わかりました!」
設楽「ふん……じゃあな。」
バンビ「(なんだかんだで、不二山くんのこと認めてるよね、設楽先輩……)」
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(1/3)
バンビ「本を返却っと……」
設楽「別にいいだろ、どういう読み方したって。」
紺野「良くないよ。 面白さが半減するだろ。」
バンビ「(あ、設楽先輩と紺野先輩だ) どうしたんですか?」
設楽「……なんだ、おまえか。 どうもしない、本を返しに来ただけだ。」
紺野「設楽、後輩にそういう言い方はよくない。」
設楽「何先輩面してんだよ。」
紺野「設楽だって威張った様な態度で……」
バンビ「あのー……」
紺野「ああ、ごめん。」
設楽「………………」
紺野「それがさ、設楽が本はあとがきから読むって言うんだ。」
バンビ「はぁ……」
設楽「それのどこが悪いんだ。 おまえに迷惑かけてるわけじゃないだろ。」
紺野「だって結末を先に読むようなもんじゃないか。 信じられない。」
バンビ「ミステリーなんかだと犯人が書かれてることも……」
紺野「だよなぁ。 その通りだよ。」
設楽「おまえは関係ないだろ。 なんで紺野の味方するんだ。」
バンビ「そ、そんなつもりは……」
紺野「設楽、後輩にそういう言い方はよくない。」
設楽「何先輩面してんだよ。」
バンビ「(ループだ……)」
(2/3)
バンビ「(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)」
設楽「………………」
紺野「………………」
バンビ「(2人一緒のわりに何もしゃべらない……) こんにちは。」
紺野「やあ。」
設楽「………………」
バンビ「……あの、静かですね?」
設楽「図書館で静かにしてるのがおかしいのか?」
バンビ「おかしくはないですけど……」
紺野「設楽、そういう態度良くない。」
設楽「そういうってどんなだよ。」
紺野「そういう態度だよ。 後輩の女の子にくらいもう少し柔らかい態度でも……」
設楽「俺は誰にでも平等なんだ。」
紺野「また屁理屈を……」
設楽「屁ってなんだ。 ただの理屈だ。」
紺野「だからそれが……」
司書「しーっ! そこ、さっきからうるさいと言ってるでしょう!」
設楽「………………」
紺野「………………」
バンビ「(なるほど、さっきも怒られたんだ……)」
(3/3)
バンビ「(あ、紺野先輩と設楽先輩だ)」
設楽「……あ。」
バンビ「こんにちは。」
紺野「やぁ、君も図書室で勉強?」
バンビ「そんなところです。 紺野先輩たちは何を?」
紺野「僕は受験勉強、彼は宿題。 たまたま会ったんだ。」
バンビ「たまたまなんですか。 それにしては、よくここで2人を見かけるような……」
紺野「まぁ、確かによく会うよ。 偶然。」
バンビ「偶然……」
設楽「……………… ……終わった。」
紺野「あれ、もう? 全部埋められた?」
設楽「半分くらわからないんだよ。 悪かったな。」
紺野「悪いなんて言ってないだろ。どれ?」
設楽「これとこれとこれ。」
紺野「ああ、定積分の計算か。 ちょっと待って、教科書出すから。」
バンビ「………………」
設楽「……なんだよ。」
バンビ「いえ、別に…… (……偶然?)」
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